A:同年受取
- 退職金(額面→手取り)
- 2,000万円→1,928万円
- 税額72万円
- iDeCo(額面→手取り)
- 800万円→771万円
- 税額29万円
- 合計手取り
- 2,699万円
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退職金が2,000万円、iDeCoが800万円あるとしても、退職後に実際に使える金額が、そのまま2,800万円になるとは限りません。
退職金とiDeCoを同じ年に一時金で受け取るのか。退職金を60歳、iDeCoを65歳で受け取るのか。その間もiDeCoへの掛金拠出を続けるのか。
この違いによって、退職所得控除の使われ方だけでなく、税引後の手取り、60歳から65歳までに使えるお金、iDeCoを運用できる期間も変わります。
退職金にもiDeCo・企業型DCの一時金にも、勤続年数や拠出期間に応じた退職所得控除があります。ただし、近い時期に複数の一時金を受け取ると、それぞれの控除を別々に満額使えるとは限りません。
この記事では、次の3ケースを実際に試算し、税金と資産寿命の両方にどのような差が出るのかを確認します。
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今回の試算から分かったことは、次の5点です。
「同時に受け取らない方がよい」「拠出を延ばした方がよい」と一律に決められるわけではありません。退職金の額、勤続年数、iDeCoの残高や拠出期間によって結果は変わるため、自分の数字で確認することが大切です。
退職金には、勤続年数に応じて税負担を抑える退職所得控除があります。
一般的な退職所得控除は、次のように計算します。
| 勤続年数 | 退職所得控除 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 |
| 20年超 | 800万円+70万円 ×(勤続年数-20年) |
たとえば勤続35年なら、退職所得控除は次のとおりです。
800万円+70万円×15年=1,850万円
iDeCoや企業型DCを一時金で受け取る場合も、税法上は退職所得として扱われ、退職所得控除を使います。会社の退職金では勤続年数を使いますが、iDeCo・企業型DCでは原則として掛金を拠出した期間が計算の基礎になります。
ここだけを見ると、「退職金とiDeCoに、それぞれ別の控除がある」と考えたくなります。しかし、受け取る年や順番が近いと、控除対象期間の重複を調整するルールがあります。
退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取る場合、2つの退職所得控除を別々に満額使えるとは限りません。
原則として、それぞれの勤続期間・拠出期間のうち最も長い期間をもとに控除を計算します。ただし、最も長い期間と重複していない期間があれば、その期間を加えて計算します。
今回のモデルでは、次のようになっています。
iDeCoの20年間は、会社の勤続期間35年の中にすべて含まれています。そのため、重複していない期間はなく、勤続35年分の退職所得控除1,850万円を使って計算します。
退職金2,000万円とiDeCo800万円を合算した2,800万円に対して計算した結果、手取りは合計約2,699万円となりました。
同じ年に受け取った場合

※「大きい方の控除だけを使う」という結果は、今回のように短い方の期間が長い方の期間にすべて含まれるケースです。加入・拠出時期が異なり、重複していない期間がある場合は計算も変わります。
退職金とiDeCoを別の年に受け取っても、受け取り時期が近ければ、過去に使った退職所得控除との重複調整が行われます。
受け取る順番によって、確認される期間が異なります。
多くの会社員は、会社を退職するときに退職金を受け取り、その後にiDeCoを受け取ります。
60歳で退職金を受け取り、19年ルールの対象から完全に外れるよう20年あけると、iDeCoを受け取るのは80歳です。しかし、iDeCoの老齢給付金は75歳までに請求する必要があります。
そのため、退職金を先に受け取る一般的なケースでは、受け取り時期をずらすだけで19年ルールを完全に避けるのは難しいと考えられます。
受け取り時期を20年あけるのが難しくても、控除に使える期間を増やせる場合があります。
ポイントは、iDeCoへの掛金拠出をいつまで続けるかです。
今回のモデルでは、会社の勤続期間が25歳から60歳まで、iDeCoの拠出期間が40歳から60歳までです。iDeCoの20年間は、会社の勤続期間とすべて重なっています。
一方、60歳で退職した後も65歳までiDeCoへの拠出を続けると、60歳を超えた拠出期間は会社の勤続期間と重なりません。その分が、iDeCo一時金の退職所得控除に反映されます。
今回の試算では、次の2ケースを比較しました。
額面は872万円から873万円とほぼ同じでしたが、税額は89万円から43万円へ減り、手取りは約47万円増えました。
このモデルでは、拠出期間を5年延ばしたことで、会社の勤続期間と重ならない期間が増え、退職所得控除が反映されたためです。


2026年8月時点では、60歳以降もiDeCoへ掛金を拠出できるのは、厚生年金に加入して働いている人や、国民年金へ任意加入している人など、一定の条件を満たす場合です。
完全に退職した人が、誰でも自由に65歳まで拠出できるわけではありません。国民年金の納付状況によっては、任意加入できない場合もあります。
また、2026年12月1日には、iDeCoの加入可能年齢を70歳未満へ広げる制度改正が施行される予定です。改正後は、60歳以上70歳未満で、iDeCo加入者・運用指図者であった人など、一定の条件を満たす人が加入・継続拠出できるようになります。
施行から3年間は対象を広げる経過措置も予定されていますが、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をすでに受け取っていないことなど、加入には条件があります。
実際に拠出を続けられるかは、iDeCo公式サイトや加入している金融機関で最新の条件を確認してください。
ここからは、税引後の受取額と、90歳までの資産推移を分けて確認します。
モデル
25歳入社の会社員
夫婦二人世帯
退職年齢・勤続年数
60歳定年退職
勤続35年
想定寿命
90歳
退職金
額面2,000万円
iDeCo
60歳時点で800万円
40歳から拠出
その他の資産
1,000万円
特定口座
公的年金
65歳から世帯で月21万円
手取り
生活費
月30万円
インフレ率
年2%
退職後収入
公的年金以外なし
運用
全世界株式を想定
特定口座・iDeCoとも
取り崩し
退職金・特定口座から
iDeCoは受取後に合流
特定口座とiDeCoのリターン・リスクは、全世界株式ETFであるVTの過去30年データをもとに設定しています。特定の商品への投資をすすめるものではなく、過去のデータは将来の成果を保証しません。
| ケース | 退職金 | iDeCo受取 | iDeCo拠出 |
|---|---|---|---|
| A:同年受取 | 60歳 | 60歳 | 60歳で終了 |
| B:5年後受取 | 60歳 | 65歳 | 60歳で終了し、65歳まで運用のみ継続 |
| C:5年後受取+拠出延長 | 60歳 | 65歳 | 65歳まで年6万円を拠出 |
Cで60歳から65歳までに拠出する合計30万円は、その他資産からiDeCoへ移す前提です。世帯全体の資産に、新たに30万円を追加する試算ではありません。
| 比較 | 退職金:額面→手取り(税額) | iDeCo:額面→手取り(税額) | 合計手取り |
|---|---|---|---|
| A:同年受取 | 2,000万円→1,928万円(税額72万円) | 800万円→771万円(税額29万円) | 2,699万円 |
| B:5年後受取 | 2,000万円→1,989万円(税額11万円) | 872万円→783万円(税額89万円) | 2,772万円 |
| C:5年後受取+拠出延長 | 2,000万円→1,989万円(税額11万円) | 873万円→830万円(税額43万円) | 2,819万円 |
AとBでは、退職金の額面はどちらも2,000万円です。
退職金の手取りは1,928万円から1,989万円へ約61万円増えました。これは、退職金とiDeCoを同じ年に合算した場合と、退職金だけを単独で受け取った場合の税額差です。
一方、iDeCoは65歳まで運用を続けたことで、額面が800万円から872万円へ増えています。しかし、19年ルールによる重複調整で税額も29万円から89万円へ増えたため、iDeCoの手取り差は約12万円にとどまりました。
そのため、AとBの合計手取り差約73万円は、税制だけの効果ではありません。退職金側の税額差に加え、iDeCoを5年間運用した結果も含まれています。
BとCは、どちらも退職金を60歳、iDeCoを65歳で受け取ります。
退職金の手取りは同じ1,989万円です。iDeCoの額面も872万円と873万円でほぼ同じですが、税額は89万円から43万円へ減り、手取りが783万円から830万円へ増えました。
今回の試算では、この約47万円の差は、主に拠出期間を5年延ばしたことで、退職所得控除に反映される期間が増えた影響です。
ただし、拠出延長の効果は、退職金額、勤続年数、iDeCoの拠出開始年齢、受け取り年齢によって変わります。掛金を延ばせば必ず同じだけ有利になるわけではありません。
税金の差だけでは、退職後の安心度までは分かりません。
iDeCoを65歳まで受け取らない場合、口座内では運用を続けられますが、60歳から65歳までの生活費には使えません。その間は、退職金の手取りやその他資産だけで生活費をまかなう必要があります。
あんしんFIREでは、それぞれのケースで計算した税引後の手取りを、60歳から90歳までの資産推移へ反映しました。
| 比較 | FIRE達成見込み | やや慎重(下位20%)の90歳時点資産 | 慎重(下位10%)の資産寿命 | 厳しめ(下位5%)の資産寿命 |
|---|---|---|---|---|
| A:同年受取 | 80.7% | 46万円 | 85歳ごろ | 81歳ごろ |
| B:5年後受取 | 83.2% | 304万円 | 85歳ごろ | 81歳ごろ |
| C:5年後受取+拠出延長 | 84.1% | 423万円 | 86歳ごろ | 82歳ごろ |


今回のモデルでは、同年受取よりも5年後受取、さらに拠出延長ありの順で、FIRE達成見込みと90歳時点の資産が改善しました。
ただし、税額が47万円減れば、90歳時点の資産も必ず47万円増えるわけではありません。受け取る時期、運用中の相場、60歳から65歳までの取り崩し方などが重なって、最終的な資産推移が決まります。
この結果は、退職金2,000万円、iDeCo800万円、その他資産1,000万円、生活費月30万円というモデルケースでの試算です。条件が変われば、結果も大きく変わります。
自分の受け取り方を考えるときは、次の5項目を確認します。
税額と同時に、60歳から年金開始までの資金繰りを確認することが重要です。
退職金とiDeCoの税金は、単純に金額を足して税率を掛ければ終わるものではありません。
確認が必要なのは、たとえば次の項目です。
税額だけを計算できても、それが退職後の資産寿命にどう影響するかは、別にシミュレーションする必要があります。
あんしんFIREの退職判断パックでは、退職金・iDeCo・企業型DCの条件を入力し、複数の受け取り方を比較できます。
自分で制度を読み解いて手計算しなくても、金額と年齢を入力することで、受け取り方ごとの違いを一つの画面で確認できます。
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退職金とiDeCo・企業型DCの受け取り方を考えるときは、次の3点を分けて見る必要があります。
今回のモデルでは、同年受取から5年後受取へ変えると合計手取りが約73万円増え、さらに65歳まで拠出を続けると約47万円増えました。
しかし、誰にとっても同じ結果になるわけではありません。退職金額、勤続年数、iDeCoの残高・拠出期間、退職後の生活費によって、税額と資産寿命は変わります。
大切なのは、一般論だけで受け取り方を決めず、自分の数字を入れて比較することです。
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一概には言えません。退職金とiDeCoの合計額が退職所得控除の範囲に収まる場合や、勤続期間・拠出期間の重なり方によっては、同じ年に受け取っても税負担が小さいことがあります。今回のモデルでは、同年受取より5年後受取の方が合計手取りは約73万円多くなりました。ただし、この差には退職金側の税額差だけでなく、iDeCoを5年間運用した結果も含まれます。
退職金を先に受け取り、iDeCoを後から受け取る場合、重複調整の対象から外すには受け取り年を20年以上あける必要があります。ただし、60歳で退職金を受け取ると、20年後は80歳です。iDeCoは75歳までに受給請求が必要なため、実際には完全に19年ルールを避けるのが難しいケースが多くなります。
退職金の勤続期間とiDeCoの拠出期間が重なっている部分は、退職所得控除の計算で調整されます。会社を60歳で退職し、その後もiDeCoへの拠出を続けると、60歳を超えた期間は会社の勤続期間と重なりません。そのため、その期間がiDeCo一時金の控除計算に反映される場合があります。今回のモデルでは、60歳から65歳まで年6万円を拠出したことで、iDeCoの手取りが約47万円増えました。ただし、拠出を続けられるか、どの程度控除が増えるかは個人の条件によって異なります。
iDeCoを先に受け取り、その後に退職金を受け取る場合は、2026年1月以降に受け取ったiDeCo一時金について「10年ルール」の影響を受けます。受け取り年を10年以上あければ重複調整の対象外となりますが、会社の退職金を10年以上遅らせられるかは、勤務先の制度によります。また、早くiDeCoを受け取ると、その後の運用期間や公的年金との関係も変わります。税金だけでなく、資産全体で比較する必要があります。
企業型DCを一時金で受け取る場合も、原則として退職所得として扱われ、退職所得控除を使います。会社の退職金、企業型DC、iDeCoを近い時期に受け取る場合は、それぞれの勤続期間・拠出期間の重なりを確認する必要があります。あんしんFIREでは、iDeCoと企業型DCを分けて入力できます。
年金として受け取る場合は、退職所得ではなく雑所得として扱われ、公的年金等控除を使います。そのため、一時金同士の退職所得控除の重複とは別の計算になります。ただし、公的年金や企業年金など、ほかの年金収入と合算して税額が決まります。年齢や年間受取額によっても変わるため、一時金より必ず有利とは限りません。
手取り額だけでは決まりません。iDeCoを何歳で受け取るかによって、生活費に使える時期と、口座内で運用する期間が変わります。退職直後の相場や、他の資産からの取り崩し方も影響します。そのため、税引後の手取りを計算したうえで、退職後の資産推移へ反映して確認する必要があります。
自分で計算した手取り額を入力し、資産寿命を1,000通りで試算する機能は無料で利用できます。退職金・iDeCo・企業型DCの額面から税金を自動計算し、受け取りタイミングや拠出期間を比較する機能は、退職判断パックの機能です。退職判断パックは、30日間・買い切り2,980円で、自動更新はありません。
このページは、退職金・iDeCo・企業型DCの受け取り方を考えるための材料を提供するもので、特定の受け取り方や金融商品を推奨するものではありません。
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