60歳で退職しても大丈夫?
年金開始までの生活費と資産推移を試算
60歳で退職を考えるとき、最初に気になるのは「65歳の年金開始まで生活費が足りるか」ではないでしょうか。
生活費が月35万円なら、60歳から65歳までの5年間で必要な生活費は単純計算で2,100万円です。退職金や預貯金があれば、65歳までは何とかなりそうに見えるかもしれません。
ただ、退職判断で本当に確認したいのは、65歳まで足りるかだけではありません。65歳以降も生活は続きます。年金が始まっても、生活費が年金だけで足りなければ、資産の取り崩しは続きます。
今回、あんしんFIREで4つの条件を比較したところ、結果は大きく変わりました。
| パターン | FIRE達成見込み |
|---|---|
| 60歳完全退職・生活費月35万円 | 56% |
| 65歳まで月5万円収入 | 68.9% |
| 63歳まで働く | 79.8% |
| 60歳完全退職・生活費月30万円 | 90.5% |
同じ60歳前後の退職でも、生活費、退職後の収入、退職時期によって結果は大きく変わります。だからこそ、平均的な生活費や一般論だけでなく、自分の退職金・生活費・年金で確認しておくことが大切です。
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今回の試算条件
現在年齢
60歳
家族構成
夫婦二人
想定寿命
90歳
現在資産
2,000万円
退職金
2,000万円
退職時点の合計資産
4,000万円
現在資産+退職金
公的年金
年250万円
65歳から夫婦で
インフレ率
2%
基本の生活費
月35万円
年420万円
このページでは、将来の金額を「今のお金の価値」にそろえて確認します。たとえば生活費420万円は「今の生活水準で年間420万円」という意味です。退職判断をしやすくするため、現在価値ベースで資産推移を比較します。
比較する4つのパターン
| パターン | 内容 | 見たいこと |
|---|---|---|
| A | 60歳完全退職・生活費月35万円 | 退職金と資産だけで生活できるか |
| B | 60歳退職・65歳まで月5万円収入 | 少し働くとどれくらい改善するか |
| C | 63歳まで働く | 退職を3年遅らせる効果はどれくらいか |
| D | 60歳完全退職・生活費月30万円 | 生活費を月5万円下げるとどう変わるか |
60歳退職で迷いやすいのは、単に「辞められるか」だけではありません。
完全に辞めるのか。65歳まで少しだけ働くのか。再雇用などで63歳まで働くのか。生活費を少し見直すのか。
この違いで、資産推移は大きく変わります。
試算結果の全体比較
FIRE達成見込みの比較
慎重に条件を見直したい
少し改善するが、まだ慎重に見たい
かなり改善する
安心して検討できそう
この結果で分かるのは、60歳退職の結果は「退職金がいくらあるか」だけでは決まらないということです。同じ退職金2,000万円・現在資産2,000万円でも、生活費・退職後収入・退職時期によって達成見込みは大きく変わります。
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資産寿命の比較(慎重ケース別)
| パターン | 厳しめ(下位5%) | 慎重(下位10%) | やや慎重(下位20%) |
|---|---|---|---|
| A:生活費月35万円 | 73歳ごろ | 75歳ごろ | 79歳ごろ |
| B:月5万円収入 | 76歳ごろ | 78歳ごろ | 83歳ごろ |
| C:63歳まで働く | 81歳ごろ | 84歳ごろ | 90歳ごろ |
| D:生活費月30万円 | 84歳ごろ | 尽きない見込み | 尽きない見込み |
60歳完全退職・生活費月35万円では、慎重ケースで75歳ごろに資産が尽きる結果でした。一方、生活費を月30万円にすると、慎重ケースでも90歳時点で資産が残る見込みになりました。同じ60歳退職でも、生活費・退職後の収入・退職時期によって結果は大きく変わります。
A:60歳完全退職・生活費月35万円
まず、60歳で完全退職するケースです。生活費は月35万円、年間420万円。退職後の収入はなく、65歳から公的年金を受け取る前提です。

この結果は、60歳完全退職が必ず無理という意味ではありません。
ただし、生活費月35万円のまま完全退職すると、慎重に見たケースでは資産寿命に余裕が出にくい結果です。
65歳までの5年間だけを見ると、退職金と資産で何とかなりそうに見えるかもしれません。しかし、90歳まで見ると、年金開始後も資産の取り崩しが続き、後半で資産が尽きるケースが出てきます。
「65歳まで足りるか」だけでなく、「65歳以降も資産がもつか」まで見る必要があります。
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B:65歳まで月5万円の収入がある場合
次に、60歳で会社は辞めるものの、65歳まで月5万円の収入を得るケースです。月5万円なので、年間では60万円。60歳から64歳までの5年間で、合計300万円の収入になります。

60歳完全退職の56%と比べると、達成見込みは改善しています。月5万円でも、年金開始までの取り崩しを少し減らせるからです。
ただし、月5万円の収入だけで一気に安心圏まで行くわけではありません。今回の条件では、やや慎重ケースでも83歳ごろに資産が尽きる結果でした。
月5万円の収入は効果があります。でも、生活費や退職金、年金額によっては、それだけでは十分でない場合もあります。ここも、自分の条件で確認したいポイントです。
C:63歳まで働く場合
次に、60歳で完全退職せず、63歳まで働くケースです。60歳から62歳まで収入があり、63歳から完全退職する前提です。

60歳完全退職の56%と比べると、大きく改善しています。理由はシンプルです。63歳まで働くことで、年金開始までの空白期間が短くなります。さらに、その間に収入があるため、退職金や資産を取り崩すペースも抑えられます。
60歳で辞めるか、63歳まで働くか。この3年の違いは、資産推移にかなり大きく影響します。
退職判断では「何歳で辞めたいか」だけでなく、「あと何年働くと、どれくらい安心度が変わるか」を見ることが大切です。
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D:60歳完全退職・生活費月30万円の場合
最後に、60歳で完全退職するものの、生活費を月30万円にするケースです。月35万円のケースと比べると、月5万円、年間60万円の違いです。

ここで大事なのは、月5万円の支出差は、年金開始までの5年間だけでなく、その後の生活にもずっと効くということです。
65歳まで月5万円の収入を得る場合、効果は5年間で合計300万円です。一方、生活費を月5万円下げる場合、60歳から90歳まで続けば、30年間で1,800万円の差になります。
もちろん、無理な節約を前提にする必要はありません。ただ、退職判断では、生活費の前提が少し違うだけで結果が大きく変わります。「退職金がいくらあるか」だけではなく、「毎年いくら使うか」がとても大事です。
節目年齢で見る資産残高
次に、65歳・75歳・90歳の節目で、慎重に見た場合の資産がどれくらい残るかを確認します。
やや慎重ケース(下位20%)の資産残高
| パターン | 65歳時点 | 75歳時点 | 90歳時点 |
|---|---|---|---|
| A:生活費月35万円 | 1,690万円 | 504万円 | 0万円 |
| B:月5万円収入 | 2,125万円 | 1,155万円 | 0万円 |
| C:63歳まで働く | 2,720万円 | 1,798万円 | 0万円 |
| D:生活費月30万円 | 2,132万円 | 1,850万円 | 1,383万円 |
慎重ケース(下位10%)の資産残高
| パターン | 65歳時点 | 75歳時点 | 90歳時点 |
|---|---|---|---|
| A:生活費月35万円 | 1,433万円 | 0万円 | 0万円 |
| B:月5万円収入 | 1,760万円 | 485万円 | 0万円 |
| C:63歳まで働く | 2,468万円 | 1,158万円 | 0万円 |
| D:生活費月30万円 | 1,803万円 | 1,208万円 | 89万円 |
65歳時点の資産を見ると、年金開始までにどれくらい取り崩すかが分かります。
75歳時点を見ると、年金開始後も資産が減り続けているかが分かります。
90歳時点を見ると、長生きした場合でも資産に余裕があるかを確認できます。
退職判断では、うまくいった場合だけでなく、慎重に見た場合でも資産がどれくらい残るかを確認しておくことが大切です。
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60歳から65歳までの生活費は「5年分」だけで見ない
60歳から65歳までの生活費を考えるとき、つい次のように計算したくなります。
この考え方自体は、最初の目安としては分かりやすいです。ただし、退職判断としては少し足りません。
なぜなら、65歳で年金が始まっても、生活費が年金だけで足りるとは限らないからです。
今回の条件では、65歳からの公的年金は夫婦で年250万円。生活費が年420万円なら、年金開始後も年間170万円ほど不足します。この不足分は、65歳以降も資産から取り崩すことになります。
つまり、60歳退職で見るべきなのは「65歳までの5年間を乗り切れるか」だけではなく、「65歳以降も含めて、90歳まで資産がもつか」です。
自分の場合は、どこを変えて確認すべきか
今回の試算は、あくまで一例です。実際の結果は、入力する条件によって大きく変わります。特に影響が大きいのは、次の項目です。
生活費
今回の試算では、生活費月35万円だとFIRE達成見込みは56%。月30万円にすると90.5%まで改善しました。生活費は60歳から65歳までだけでなく、65歳以降にもずっと影響します。
退職後の収入
月5万円の収入でも、65歳まで続けば合計300万円になります。少額でも、年金開始までの取り崩しを減らす効果があります。
退職時期
60歳で辞めるか、63歳まで働くかで結果は大きく変わります。数年働くだけでも、資産を取り崩す期間が短くなり、達成見込みが改善します。
公的年金
65歳以降の年金額が生活費に対してどれくらいあるかも重要です。年金だけで生活費をまかなえない場合、65歳以降も資産の取り崩しが続きます。
退職金・NISA・iDeCo
退職金をいくら受け取るか、NISAやiDeCoをいつ取り崩すかによっても資産推移は変わります。特に60歳前後では、退職金・企業DC・iDeCoの受け取り時期も含めて確認しておきたいところです。
運用状況
退職後も資産は運用され続けます。相場の下落が続いた場合の資産推移も、慎重ケースとして確認しておくと安心です。
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